鼻ぐり井出(はなぐりいで)所在地:菊池郡菊陽町

鼻ぐり井出(はなぐりいで)所在地:菊池郡菊陽町

熊本城築城を行った加藤清正は、在位15年の間に多くの土木事業も行っています。
その中の1つが、慶長13年(1608)に完成した馬場楠井出です。

馬場楠井出は約1800m上流の白川に築かれた馬場楠堰から取水する灌漑用水路です。
阿蘇に源を発する白川は火山灰土壌のためヨナ(火山灰土砂)の堆積がひどく、井出の管理が大変でした。その課題を解決したのが、水の力と岩盤を利用してヨナの堆積を防ぐ「鼻ぐり」という独特の仕組みです。

構造は、岩盤を掘削する際に岩を隔壁(約2〜5mおき、厚さ約1m、高さ4m)として屏風のように残し、その下に半円形の直径約2mの水流穴(鼻ぐり穴)をくり抜いたものです。

この岩盤にぶつかるヨナを含んだ水流は、壁の影響で流れが変化し、渦を巻き土砂とともに流されていく仕組みになっています。

また、水量調節のため分水路も設けられ、水不足の時には分水路を通し鼻ぐり下流で水を合流させ、また大雨時には分水路に設けられた「吐(はき)」から不要水を排出する構造となっており、上流の水位変動に影響されることなく恒久的に安定した通水量を保てるようになっています。

現在も24カ所が残っており、鼻ぐりによって生じる渦を見ることができる全国無類の遺構です。
「鼻ぐり」と言う名称は、水流穴が牛の鼻輪を通す穴に似ていることに由来しています。